快楽値。
ヒロインの性欲を数値化させた画期的な仕組みであり、多くの同人エロゲーに搭載されています。
始まりはHPバーと同列程度でしかなかったのですが、次第にその可能性を広げてきました。
サブイベントや戦闘、マルチエンディングへの活用など。
間違いなく同人エロゲーの発展に貢献した重要な要素と言えるでしょう。
しかし、それが今、他の可能性を潰す要因になっていると思ってならないのです。
そこで今回は「快楽値の功罪」について考えていきましょう。
目次
快楽値の魅力
ノウハウが体系化され、展開を読みやすい
快楽値を基盤としたノウハウが蓄積され、それに沿った作品が多く生み出されています。
- 段階エロの遷移をスムーズにできる
- 結末が「True」と「快楽堕ち」で確定している
- 快楽値を条件に和姦や凌辱、NTRなどあらゆる性癖を取り入れられる
エロに関して言えば、快楽値を導入した時点で枠組みがほぼ確定すると言えるでしょう。
これはクリエイターよりプレイヤーの方が恩恵が大きいです。
エロのフラグが読みやすく躓くことがない。これが本当に素晴らしい。
- 今は見れないエロイベントは快楽値を上げれば良い
- 売春イベントは快楽値依存
- 快楽値を上げる手段
この辺は説明せずともプレイヤーは理解しています。
もちろん完全新規は戸惑うでしょうが、それでも全員に理解させるよりは遥かに簡単です。
RPGツクールと同様で、マニュアル要らずなのは確かなメリットと言えるでしょう。
快楽値を内包したエロステータスの発展
段階エロと快楽堕ちは差別化が難しく、これだけだと似たような作品しか生まれません。
性癖の多様性でごまかすのにも限界があるでしょう。
そこでサークルはエロステータスを作り込むことで独自の世界観を作り上げることにしました。
- 性経験
- 初体験の相手
- 部位別の感度
あくまで一例であり、実際はより多くの項目が生み出されています。
表現方法も多様で、サークルの色が最も出る部分と言えるでしょう。
宣伝素材としても申し分なく、エロステータス画面を見て購入をする人もいるかと思います。
快楽値の抱える問題
ここまで話したように快楽値が同人エロゲー発展の立役者となったことに異論はありません。
しかし、一方で同人エロゲーの可能性を狭める原因にもなっているのではとも思っています。
性癖が散らかる上にイベントが固定になりがち
快楽値そのものの話ではありませんが、「性癖の多様性」がメリットなので問題として挙げないわけにもいきません。
快楽値を条件に様々な性癖を入れられるものの、弊害として1つ1つが薄くなりがちです。
例えば、催眠好きで買っても全体の2割にも満たないなど。
レビュー時にも苦労する点でして、作品の強みが分からないんですよね。
なんとなく全体的にエロい!としか言えず、薄い感想になりがちです。
また、イベントが被りがちなのも気になります。
- 快楽値に応じて段階的な露出が可能
- 一定以上の快楽値で売春が可能
- 催眠やバイトは段階エロ搭載
様式美とも言えませすが、やはり既定路線だとマンネリを感じます。
結局、この作品ならではの売りはなんなのか。
もはやエロシチュでは判断できないので、ゲーム要素や画力で選ぶしかありません。
陵辱で心に傷を負うエンドになりえない
快楽値を搭載したエロゲーは、その値に応じたエンドを迎えます。
- 処女エンド(Trueエンドの意味合いが強いが、最近は少な目のルート)
- ノーマルエンド(快楽値が一定以下。Trueになることも)
- 快楽堕ちエンド
単純明快で、エロRPG初心者も抵抗なく受け入れられるエンドばかり。
特に快楽堕ちは淫乱になったヒロインを楽しめる素晴らしいエンドと言えます。
しかし、思うのです。何かが足りないと。
一度受けた傷は消えません。しかし、どのルートでもその傷を振り返ることはありません。
苦しんでほしい。葛藤してほしい。汚れた自分と無理にでも折り合いをつけてほしい。
そんなヒロインの心を半端に壊したビターエンドが快楽値の搭載で消えてしまっているのです。
快楽値を搭載した同人えろRPGへの提言
快楽値の問題点は2つ。
- エロシチュの分散
- ビターエンドの消失
それぞれについて僕なりの考えを述べていきます。
柱となるエロシチュが欲しい
この作品はこういった強みを持っている。
そういったアピールポイントが欲しい。
エロシチュは深堀しようと思えば、どこまでもできます。
催眠、売春、痴漢、露出、監禁など。
もちろん同人エロRPG以外であれば、いくらでも特化型は存在します。
ですが、同人エロRPGでも可能なはず。
一番考えやすい売春を例に考えてみましょう。
- 客の命令で痴漢プレイを強要される
- 街を歩くと、身バレする
- 売春の経歴を活かし、AVデビュー
- 戦闘を売春で切り抜ける
- 自社製品を売るため、自らが被験者になって宣伝する
1つ1つは珍しいシチュではなく、割とどの作品でも見ます。
ただし、一例では常に売春を念頭に置いて考えてみました。
このように、特定の性癖を基盤にして、その上で多様性をアピールしてはどうか?というのが僕の考えです。
作品のアピールポイントとして申し分ありませんし、従来の快楽値搭載の同人エロRPGと大きく変わることもありません。
快楽値に代わる指標への転換
悪魂入りのカティでは、代替として「尊厳値」を設定しています。
他人を救う対価として性的な要求を呑むたびに下がっていき、より過激なシチュエーションに変化する仕様。
しかし、そこに快楽堕ちはありません。
ただただ人々に絶望し、それでも助けるために身体を捧げる。
最後はビターエンドにふさわしい結末を迎えるのです。
このように快楽値以外の指標を設定することで、エンディングに斬新さを与えることが可能です。
なにも心を堕とすことにこだわる必要もないでしょう。
身体だけに快楽値を設定し、心はいつまでたっても同じまま。そういうのも面白い。
プレイヤーの予想を覆す。そんな物語を作るうえで、新たな指標は一考の価値ありではないでしょうか。
最後に:実は快楽値は減っている?
長々と話しましたが、最近では快楽値を搭載した同人エロゲが減っているように感じます。
これまでに説明したように快楽値を設けると、際限なく性癖を取り込めます。
それがハードルになってるのかもしれません。作品ボリュームがとんでもなく上がりますからね。
また、和姦特化作品も増えており、多少なりとも陵辱を含む「快楽値」は邪魔になってるのかもしれません。
いずれにせよ陵辱愛好家としては結構きつい話ではあります。
今後も快楽値は続くのか。なくなるのか。別の何かに変わるのか。
同人エロRPG界隈も変革の時を迎えているのでしょうか。